1-(1)魔物の罠にかかったら

「ここだよね? 見てたからわかるよ。けど、感じてもイケないんじゃつらいだけかー。かわいそうだね。でも可愛い」
 早く終われ。終わってよ、全部。
 固く目をつぶってやり過ごそうとしていると、おとなしく見守っていたメヤが声を上げる。
「ねえ、そろそろ僕も!」
「ん、いいよ」
 ——一人目終わり……?
 抜いてもらえるのかと思いきや、そうではなく。ミヤは航の背に腕を回す。抱きかかえたまま後ろに倒れ、正常位から騎乗位に、器用に体位を変更する。見かけ以上に腕力があるらしい。まだペニスは入ったまま。替わるんじゃないのか?
 順番待ちの片割れに向かって、ミヤは結合部を広げてみせる。
「どうぞ」
「まさか……」
 ここに来るというのか?
「おじゃましまーす」
 航の尻の前にスタンバイしたメヤは、すでにミヤのものを咥えこんでいる場所に、ペニスを押しつけてくる。
「無理、無理だからぁっ」
「お薬使ってるから平気平気。伸びるはず」
 双子に挟み込まれる体勢で、メヤには後ろから挿入された。当然先ほどより進みは遅く、かなり強引にごりごりと道を開いていく。
「わあ、ほんとだ。かなりきっついけど、気持ちいい……」
「でしょ?」
「あー、入った入った。やっぱいけた。めっちゃ頑張ってお口開けて健気」
「こっからは見えなーい」
「ミヤは初物食えたんだからいいじゃん」
「まあね。ああ、すっごい締まる。滅茶苦茶に動きたい……」
「……やめてってばぁ」
 か細い叫びなど届かず、上から下からそれぞれ思い思いに掻き回される。
 不快で苦痛なだけならよかったのに、繰り返されるうち——。
 ——違う、違う……。
 認めたくない。一人相手も時より、悦さが増しているなんて。よければよいほど、それは航を追い詰める。
 一向に達せられず、ぎりぎりで止められ続け。正常な思考などできず、ただ啼かされるだけ。
「中でメヤのちんちんと擦れるのも気持ちいい……」
「僕も。三人でいっぱい気持ちいいの、嬉しいね」
 イキたい、イキたい。それしか考えられなくなる。知らず、赤く熟れきったペニスをミヤの腹に擦りつけていた。
 さんざっぱら航を弄んだ双子は、満足げに射精の時を迎える。中で二本のペニスがどくどくと脈打っている。航はイケないのに。
 啜り泣く航から、彼らはやっと出ていく。
「あー、気持ちよかった」
「後はちゃんと殿下におねだりするんだよ?」
 ベッドに投げ出され、ついさっきまで塞がれていた穴からは、どろどろと精液が零れ出る。早く全部掻き出したい。洗って綺麗にしたい。でも、わかっている。これで終わりじゃないことは。
「殿下、どうぞー」
「待ちくたびれた」
「ごめんなさーい」
 殿下が来ても動く気力がなく、じっとしていた。跨がって来た彼が、腹にのせてきたもの。ずっしりとした重み。恐る恐る視線をやる。大きいであろうことは彼らの話の内容から想像がついていたが、それどころの話ではない。一人で双子二人分を軽く超えていた。
 ——怖い、怖い、怖い……。
 あれ以上広げるなんて。
「あ……、これはほんとに駄目、無理……」
「双子の頑張りを無駄にする気か?」
 尻を掴み、太く雄々しい先端をアヌスに押し込もうとする。
「裂ける!」
「裂けたらすぐに治してやる。それからもう一回だ」
「ひっ……」
 ぐっと腰を突き入れ、力業で広げられていく。こんな大きいの、物理的に不可能だと思うのに、どうして飲み込めてしまうのだろう。あの怪しい薬のせい? それとも魔法?
「うっ……あ、来る、お腹のなか、いっぱい。こわい、つぶれるっ」
「潰すものか。貴重な人間の中でも、お前は優良な個体のようだからな」
「なに、わかんない……ぃ、やだ、くるしい」
 苦しいのに。拒めない以上、迎えるしかなく。身体は律儀に彼の大きさに馴染もうとする。諦めを持って受け入れれば、後は気が狂うほどの、苦痛と紙一重の快楽に翻弄されるだけ。
 中のいいところ、残らず押しつぶされて。セックスはもっと幸せでふわふわしたものではないの? こんな暴力的なまでの快感なんて。
 荒い呼吸の合間に訴える。
「イキたい、イキたいぃ……っ」
「おねだりはどうするんだ」
「え、うぁ、お願いします、イカせてください……? とにかくイカせて! 糸取って! 取ってよぉ」
「……まあいいか」
 先っぽが奥に当たり、ぐいっと力が加わる。そこは脳が溶けるみたいに強烈な。
「あ、ひっ……」
 ペニスを苦しめていた糸が解けて消える。手足の糸も同時に。
 一気に溢れ出す。奔流が押し寄せる。ああ、これが欲しかったのだ。
 ——気持ちいい……!
 気づかぬうちに男にしがみつく。口を閉じるのも忘れ、精液を撒き散らしながらがくがくと震えた。
「わあ、よかったねえ」
「いっぱい出てる」
 双子の声はどこか遠い。
 解放感に浸っている途中、まだ射精が終わらないうちから、中にいる男のものがずるりと動く。
「わあ、まだ、まだぁ」
「大分待ってやっただろう」
 抽挿が始まる。過敏になったそこをまた掻き回し、新たな絶頂に強制的に連れて行こうとする。もっと浸っていたいのに。もう新しいのなんていらないのに。
「ひどい、ひどい、鬼、悪魔、人でなし、親知らず!」
「鬼と悪魔と人でなしはわかるが、親知らずとは何だ?」
「僕知ってる、生えてくると痛い歯のことでしょ」
「殿下は歯なの? なんで?」
 適当に叫んだだけだ。意味なんてない。
「悪態つく余裕あるんなら手伝っちゃお」
「暇だもんねー」
 胸元に黒い革紐のようなものが二本伸びてくる。紐の先には平たい三角の飾りがついていて、蛇のごとく肌を這って、両乳首に巻きつく。紐部分できゅっと締め、三角で擽り。殿下にいくら身体を揺さぶられたって付いてくる。
「やめっ……やぁ」
「僕たちの尻尾だよ。いいでしょ」
 いいわけない。これ以上の刺激、肉体も頭も心も壊れてしまう。イキっぱなしになって、幾度となく精を垂れ流す。
 その様子が可愛いだのなんだの、双子はいちいちやかましい。彼らの会話に混じって、どこからともなく聞こえてくるざわめき。囃し立てる何人もの声。
「……?」
 突然身体が宙に浮く。殿下に持ち上げられたのだ。いったん引き抜かれ、身体をひょいと裏返しにされた後、後ろから再挿入された。
「ひぁっ……う」
 角度が変わり、より深いところまで来たようで、息が詰まってくらくらした。弾みでまた吐精する。
 ——ちんこ馬鹿になってる……。
「これが全てではないのだがな。またそれは追々か」
 さらりとまた恐ろしいことをのたまい、殿下は髪を掴んで顔を上げさせる。
「見ろ」
「ん……?」
 うつろな視線を巡らせる。はっきりと姿は見えないが、隅の暗がりに大勢の気配がある。興奮を滲ませた多くの目。誰かいる。たくさんいる。航が嬲られているのを見ている。いつの間に……。
「見物客に愛想でも振りまいてやれ」
 無理に決まってるだろう。なんて悪趣味なんだ。大嫌いだ、こんな男。
 特等席で鑑賞している双子は、揃って涎を拭う。
「美味しそうな汁でぐちゃぐちゃ」
「もう我慢できない!」
 彼らは航の股間に引き寄せられてきて、出てきたばかりの精液を吸ったり、肌についた精液を舐めたり、欲望のまま航を味わう。
「カウパーより濃くて美味しいね」
「ねー。いつまでも舐めてたい」
 ——もう……、こんな……、いつまで……。
 脳がいよいよ限界と判断したのか、ふっと意識が遠のく。だが、背後から伸びてきた手が頬をぺちぺちと叩き、楽になろうとするのを阻む。
「おい、寝るなよ。根元までぶち込むぞ」
「やぁ……」
 気を失いそうになると叩き起こされ、交接は続いた。

 永遠に終わらないのではないかと思ったが、ようやく男の性器が自分の中から抜けていく。大量の名残を中に残して。大分漏れて尻の周りを汚していたが、まだまだ留まっていて、腹が重いくらいだ。
 ——汚い……。
 全部出し切ってしまいたいが、あまりにも疲弊していて、指先も動かしたくない。
 不穏な会話が耳を通り抜けていったとて、航に何ができただろう。
「殿下、この子皆にあげていい?」
「いや、気に入った。私が飼うことにする」
 見物客からブーイングが起こる。
「次に罠にかかった奴はお前らにやるよ」
「最近罠にかかる人間なんて滅多にいないじゃん」
「独り占めずるいー!」
「気が向けば貸してやる」
 このまま飼われる……? そうか、終わりじゃないのか、まだ。終わらない。覚めない。夢なのに。夢じゃないから……。
 神隠しに遭ったという祖父の弟のことを思い出す。ある日突然いなくなったという彼は、未だ行方不明、二度とは家に戻っていない。
 彼の部屋にあったというあの古い本は、今は航の部屋にあって。多分、航は同じなのだ、彼と。気づいてしまった。気づかなければよかった。
「えー、なんかまた泣いてるよ、この子」
「殿下、優しいから早く終わってくれたのに。なんでだろう」
「なんでだろうねえ」
「もう泣き止め」
 男の唇が、航の口を塞ぐ。
 ——あれ、これ、ファーストキスじゃ……。
 もういいか、何でも。どうせなにもかもみんな滅茶苦茶にされてしまったのだから。
 殿下はベッドを降りる。
「風呂に入れてやれ。その後は私の寝間まで連れてこい」
「了解でーす」
「お風呂だって、行こっか」
 ミヤの肩に担ぎ上げられる。されるがまま運ばれた。

 魔物の罠にかかったら、そこは出口のない鳥籠の中。

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