「……さっきトイレで洗うだけ洗った」
「見てあげよう。四つん這いになって見やすいようにして」
「はい」
指示通りにベッドに上がり、うつ伏せで尻を高く上げる。そのとき、動画の中の自分の姿が頭をよぎった。隠すべき場所を喜んで晒して——。体勢は違うが、彼の目には今あんな風なみっともない自分が映っているのだ。
シーツに顔を擦りつける。
「うぅ……」
「どうしたの」
「恥ずかしいー」
「今更?」
「あの動画の後だから……」
「まあいい。恥ずかしがってな。それもおもしろい」
尻を軽く叩いたあと、彼は尻の割れ目とその周辺にローションを塗りつける。指が——多分まずは一本挿入された。きっと動画のように穴を開いて飲み込んでいるのだろう。
彼が中で動かすたび、くちゅくちゅと音がたつ。
「……あれ、いつもよりかたいね」
「昨日一人でするとき、そっちは弄んなかったから……」
「直近でここ使ったのは?」
「前に聡司くんとしたときだよ。やりすぎで締まりが悪くなることあるって……」
「そんなこと誰が言っていたの」
「伊澤。ヤリマンのガバガバにあたったとかいう話をしてるときに」
「下品すぎる。そんな話、君には聞かせたくないな」
前立腺を狙い、ぐっと押し下げられる。
「ひゃっ、うぅ……、も、もうそういう話には加わらないようにするし、伊澤とは喋らないからっ」
「現実的に無理だろう。君の交友関係を制限するつもりはないよ。ただ、なるべく耳に入れないように努力はすべきだね」
結局、恵瑠にとってこの束縛は心地いいものなのだ。
数日空いたとはいえ、抱かれ慣れた身体では準備に時間はかからない。増えた指に中が馴染んできたところで、彼は指を抜く。
「もういいかな」
「うん……」
「残った服を脱いで」
「はい」
身につけたもの全てを取り去り、床に落とす。聡司もだ。一緒に風呂に入るときはさすがに脱ぐが、ベッドで毎回裸とは限らないから嬉しい。
お互いに何も身につけていないこの状況では、やはりどうしたって股間の方に目が行ってしまう。
——ばっちり反応あり。元気……。美味しそう……。
足舐めがよかったのかな。それともハメ撮り鑑賞の余韻を引きずっているとか。凝視しているとさすがに気づかれた。
「見すぎ。これも今更……。見慣れているだろう」
「毎回新鮮な気持ちで見ています」
「へえ。なに、ずっとそうやって見ているだけでいいの?」
「よくない!」
「だよね。膝においで」
「はい」
嬉々として、座った聡司の足を跨いで膝立ちになる。
ご褒美タイムだ。というか、ハメ撮り鑑賞の後はずっとご褒美? いいのかな。有難いけど。
「手を出して」
仰せの通り、両手を差し出す。聡司はいつの間にやら取り出していた、首輪と同じ素材の黒の手枷を、恵瑠の手首に巻き付ける。左右の手枷は短い鎖で繋がっていて、つけると手の可動範囲が極端に狭くなる。
これも慣れたプレイアイテムだし、何より彼のことを信用しているから、特に恐れを感じることはない。
「手は僕の頭の後ろに」
これも指示通りに。二本の腕の間に彼の頭を入れ、肩に手を置く。
「そう、それでいいよ。さっき顔を隠していただろう。これで隠せない」
「あ……」
「全部見せて」
抱っこで密着しているこの距離の近さだと、恵瑠を引き込もうとする視線の強さをより感じる。
——うん、見て、全部……。
恥ずかしいところ、全部。
「聡司くん……」
抱きつこうとして、腹と腹で互いのものが挟まれ、押しつけ合うような形になり、びくっと過剰反応してしまう。
「……ひゃっ」
「急かしてるつもり?」
「そういうことでは……、ないこともない?」
「なにそれ」
腰を撫でる掌。触れられた場所の痺れるような甘い感覚が、全身に伝わっていく。
「当ててあげるから、自分で入れて」
「……はい」
穴に先端がくっついたのがわかった。逸る気持ちを抑え、ゆっくりと腰を落とす。窄まりが開き、迎え入れる。
荒々しく扱われるのもいいが、自分のペースで彼を感じるのも——。
「あっあっ……、いいよ、いい。好きぃ……」
「恵瑠はこれで中をぐちゃぐちゃにされるの大好きだもんね……」
「好き、好き、聡司くん……」
息遣いを耳元で感じるのも、高まる体温を素肌に感じるのもたまらなくて、腕でも中でもぎゅうぎゅうと締めつける。
「聡司くん好きー」
「わかったわかった。わかったからちょっと緩めて。これじゃ奥まで行きづらい」
「んー」
意識的に腹に力を入れると、肉を掻き分けてずいっと奥へと来る。
腰を支える彼の手に促され、小刻みに身体を揺すりつつ、いい場所に当たるよう調節する。
首まで流れた汗を舐め上げられ、薄い皮膚を吸われ。多分、痕が残るだろうな。構わない。いくらつけてくれたって。
——ああ、でも、ちょっと遠いな、唇……。
「聡司くん……」
「なに」
「……えっと、えっとね、その、あ」
「腰振るのに夢中で頭働いてないって顔してる」
「聡司くん、聡司くん……」
「口が寂しい?」
まさしくそうで、頷く。なんでわかったんだろう。すごい。
「おいで」
呼ばれるままキスをした。彼の髪をかき回しながら、違う角度で、何度も。
胸元にも手が伸びてきて、指の腹が乳首を小刻みに引っかく。下からの突きは腹に響いて、どこもかしこも気持ちがいい。
二人分の熱で、触れ合ったところからとろとろに溶けそう。ずっとずっとこうしていたい。
「恵瑠、手どけて……。胸の前に」
「……?」
「しょうがないな……」
指示をよく理解できていない恵瑠の手を、彼は両方の手を使って自分の後ろから前へ持ってこさせる。もちろんされるがままだ。そして、掌で背中を支えられ、後ろに倒される。
「わあ」
聡司が上にいる。見下ろされるのも好きだ。
抽挿を再開し、腰を使いながら、彼は湿った掌で恵瑠の頬を包む。
「……一緒にいくんだよ。先にいったらお仕置きだからね」
「うん、うんっ……」
動きが早く。押さえ込んでいた射精感が、急速に上ってくる。
「またいっちゃうよぉ……、いい? いい? 聡司くん、いきたい……っ」
「まったく……」
「いこ……、一緒にいこ、聡司くん……。中にいっぱいちょうだい」
手が自由にならないので、足を彼の腰回りに絡みつける。
「だから、ゴム付けてるってば。そんなセリフ……、それもよそで覚えてきたんだろう。悪い子」
「お仕置きしてぇ」
「言ったな」
「あんっ……」
いっそう早く強く。弱い箇所をいっぱい抉られて……、気持ちいい、気持ちいい、どうしよう、おかしくなる。
どうにも我慢できなくなって、快感が極まり、波の向こうに連れて行かれる。
「……う、あ」
「恵瑠……」
彼は恵瑠の手を掴んで頭の上にあげさせ、口づける。腰の動きが止まったので、足でぐっと引き寄せてやると、中でどくどくと脈動を感じた。いつか中で出されてみたい。どんな感じがするんだろう。
「はあ……」
充足感に浸っていたところに、力を抜いてのしかかってこられ、隙間なく肌と肌が重なる。体重はかかっているが、彼は横に肘をついているので、苦しいほどではない。
ねぎらうように、額に唇が触れる。
「……やっぱり君の方が早かった」
「一緒ぐらいだと……」
「でも、どっちにしろお仕置きはしてほしいんだろう」
「何するの?」
「嫌がることをしないとお仕置きにならないからな……。何がいいかな」
嫌なこと。吊されて鞭打ちとか? 蝋燭とか? 怖い。ぞっとする。その場の勢いで迂闊なことを言うべきではなかったかも。
だが、聡司の考えは思いのほか平和的だった。
「そうだ。あれだ。この前言っていたオナニー報告は?」
「……そんなのでいいの?」
「その様子を動画で撮って僕に送ってよ。で、一緒に見ながら口頭でも報告」
ハメ撮り鑑賞も乗り越えたので、そうハードルが高くも感じないが、それより他に気になることが出てきた。
「そんなに俺のエッチな動画集めてどうするつもり……?」
「コレクションにする。コレクターになぜ集めるのかを聞いてはいけないよ。集めたいから集めるんだ」
「動画を送ること自体より、彼氏にエロ動画収集の趣味があることが嫌だ……。恐竜好きは可愛いのに……」
「君限定でも?」
「他の人のを集めるくらいなら、まあ……いい、のか? いや、でも」
「いいだろう。そういうことで」
唇へのキス。おそらくこの件に関してこれ以上の文句を封じる狡いキスだ。でも、まあ乗ってあげようかな。キスは好きだし、実のところまだやり足りないし。
「ねえ、聡司くん。二回目どうする……?」
「ご要望があればお応えするけど、そろそろ……」
タイミングを計ったように、恵瑠の腹がぐうと鳴く。
「あー」
「もう晩ご飯の時間だな。また後にしようか」
「……それもそうだね」
「面倒だから今日もデリバリーで」
「ん……」
入れっぱなしだった彼のものが出て行く。
スキンを捨てた彼がスマホを取ったので、てっきりデリバリーのメニューを見るのかと思いきや——、カシャッと音がする。誤魔化しようなんてない、あれは。
「また撮った!?」
「閉じきっていない穴がいやらしいなと。ほら」
「もう見せなくていい!」
「外してあげるから騒がないで」
「……」
習性で黙ってしまう自分。
手枷と首輪が手早く取り外される。涼しくなった首元をさすりながら起き上がり、小さく溜息をつく。
「……絶対流出させないでね?」
「気を付けてるよ。スマホで撮ったデータはパソコンに移動させてあって持ち歩いていない。僕が君のこんな姿を他人の目に晒すはずないだろう」
「くれぐれもお願いしますね!」
「ああ」
断固として拒否すれば、これ以上の撮影はやめてくれるだろうけれど。そこまで嫌とも言い切れないのだった。楽しそうなのでさせてあげたい気持ちの方が強い。
聡司は今度こそスマホでフードデリバリーのアプリを開く。
「何にする?」
「口が裂けそうになるくらい分厚いハンバーガーが食べたい。お腹すいた……」
「夜にハンバーガー?」
「こないだはピザ食べたじゃん。ジャンキーレベルは同じくらいだよ」
「それもそうか。食後に頑張ってエネルギー消費すればいいわけだしね」
「そうそう。俺、牛肉!って感じのやつがいい。肉! チーズ! どっさり! みたいな」
「君に任せるよ。好きに選んで」
スマホを渡された。評判のよさそうなところを探すことにしよう。
結局今日も泊まり。明日妹に揶揄われそうだな。
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