ぐったりと後ろにもたれかかったのを、彼は支え、耳や首筋にキスをする。
「よくできました。いい子、可愛い」
「その鏡、誰の……?」
「さあ。藤か大川さん?」
「駄目じゃん! 人のものにあんなの付けちゃって」
「後から綺麗にすればいいよ。ねえ、そんなことより入れていい? ちょっと休憩する?」
「……入れたいって声がこの辺から聞こえる」
尻を彼の股ぐらに押しつける。大きくて硬くて熱くて。すでに準備万端なのがわかる。
「てか、これ、入るの?」
「入る入る。大丈夫。気持ちよくするから、まずはちょっとだけ……」
「また『ちょっとだけ』が出た。どうしよっかなー」
「あー、焦らしてるつもり?」
丸い先端が穴にぐりぐりと擦りつけられる。
「入れたい。ここに入って、思いっきり中をぐちゃぐちゃにしたい。利都の気持ちいいとこいっぱい突いて、奥にいっぱい出したい」
「やっぱりちょっとだけじゃない……。て、え、直でいくの? ゴムとかいるんじゃないの?」
「俺は人間の病気持ってないし、病気にもかかりません。問題なし。……よっと」
利都をひょいと抱き上げると、布団へ身体を横たえさせる。
両足を持ち上げられ、腰が浮く。その状態で足を開かせられると、もう何もかも丸見えである。手を伸ばそうとしたが、払い除けられた。
「うわあ」
「隠さないの。全部見せて。……ね、いいよね?」
「はい……」
「入れるよ」
押しつけられた先端が、後孔を広げる。ゆっくりと開かれていく。
不安でたまらないのに、やっとこの時が来たんだって、心臓が痛いくらいに嬉しいって騒いでいる。
「利都の中に飲み込まれていくよ。すごい」
少しずつ、少しずつ、内側が埋まっていく。
「ちゃんと息して。深呼吸。すーはー、すーはー」
「す、すーはー、すーはー」
「うん、上手上手。こっちも触ってあげるから」
平常モードの性器をやわやわと揉む。異物感と圧迫感との戦いだったが、それで大分気が紛れた。
汗が瞼に流れてきたのを拭ってくれた優しい仕草は、彼に任せておけば怖がることなんてないのだと思わせてくれる。
「今どのくらい……?」
「半分弱くらい? 初めてだから慎重にね。痛かったら次したくなくなるでしょ」
「うん……」
焦ったいが、気遣われているからこそだ。
「寒くない? 寒いよね?」
さらには自分が着ていた上着を引っ張ってきて、腹に掛けてくれる。それはとてもありがたいのだけれど。
「憎たらしい。余裕……」
「余裕なくなると戻っちゃうから」
「戻る?」
「これ、化けてるの。忘れた?」
「ああ、白い稔実さんになるってこと? いいじゃん、戻っても」
「あれは野性が強くなるというか……、歯止めが効かなくなったら困るだろう」
「白い稔実さんとしたーい」
「だーめ」
お喋りするのも気が紛れていい。
やがて、彼の動きが止まる。
「全部入った……?」
「まあ、とりあえずはそういうことで」
「どっち?」
「入ってる入ってる」
「ねえ、動く?」
「せっかちだなあ。……ああ、まずい」
「何が?」
「ほんとに繋がってるんだなって思ったら、なんかこう、ぶわっと……」
「戻っちゃえ戻っちゃえ」
「だーめーでーすー。うぅ、もうなんか無理。動くね?」
表情にはまだ余裕があるように思えたが、息は荒いし、いつもより体温が高い。あくまでもゆっくりペースを貫いて、ずるずる引き抜き、また入れて、を繰り返す。
知らぬうち、また息を詰めていたらしい。
「利都、すーはーって」
「すーはー……」
「そうそう。利都のいいとこしたげるね」
指でしてもらって刺激の強かった箇所にぐりっと当たる。
「あっ……」
「俺の身体でいっぱい感じて」
またそこばかりを攻められる。声を抑えることを忘れるほど切羽詰まっていく。何も考えられなくなっていく。
不意に奥へ突き入れられる。背が反り、喉を晒す。
「ひっ……ぁ」
「……ごめん。俺ってほんと駄目」
抽挿が激しくなる。訳がわからないまま、中を抉られ、掻き混ぜられ、揺さぶられ。混乱して叫ぶ。
「待って、待って待って! 待ってってばぁっ」
「ごめん、むり、気持ちいい……」
絡んだ視線の先の瞳は金色。いつもより肌が白いから、頬の紅潮がよくわかる。
「結局、戻ってるっ……」
「利都、利都……」
聞いちゃいない。余裕がなくなって変化が解けたのなら、余裕を無くならせた利都の勝ち? 彼が利都に夢中になっている。まあ、いいか、それなら。
——気持ちいいし……。
「もっと来て……」
両手を差し伸べる。顔を近寄せてくれたので、首に腕を回して抱きつき、キスをした。
「稔実さん、好き、好きっ……」
「……利都」
ついて行くだけで必死だ。果たしてついて行けているのか。引きずり回されているだけのような気もする。突かれて啼き、乱され。
やがて、ぴたりと腰の動きが止まり、彼はぶるりと身体を震わせる。
「ごめん、いく……」
力強い脈動と共に中に精が撒かれた。
腹の中も、そして腹の上にも精液が飛んでいる。いつの間にやら利都も達して汚していたようだ。無我夢中だったから気づかなかった。
もう指一本動かしたくないほどへとへとである。放心状態で四肢を投げ出す。
「……一日三回もいくなんて初めて」
「なら、どこまでいけるか試してみる?」
対して、満面の笑みを浮かべる彼は、始める前より元気に見えた。
「……え?」
「もう一回、もう一回しよ。二回でも三回でも」
「これってそんな何回もするものなの……?」
「何回でもいいよ!」
「えー……」
「ねえ、やだ? どうしても?」
おねだり攻撃に出てきた。利都の首筋あたりに頭を擦りつけてくる。あざとい、が、狐の耳の効果もあって、とても可愛い。悔しい。
「どうしてもってわけじゃ」
「お願い。もう一回だけ。利都は寝てるだけでいいから。ね、ね?」
「……ほんとに一回だけだからね」
「うん! うれしい」
お礼のキスを受け取ったとき。
——あれ……?
中に入ったままだったものがまた大きくなったような。
「もう回復……?」
「俺はまだ一回しかいってないもん」
まだまだ当分眠らせてもらえそうになかった。
翌日。昼前まで布団の中で二人、ごろごろして過ごした。ブランチを取った後、午後も居間でごろごろする。前日までの疲れが大いに残っている休日は、家でのんびりするに限る。
畳の上に腹這いで寝そべり、スマホを弄っている稔実は、完全にくつろぎモードで、昨夜から「白い稔実さん」のままだった。利都は温かい緑茶を飲みながら、彼の背中から尻までの完璧なラインとズボンからはみ出た大きな尾という不思議な組み合わせを鑑賞していたところ、ふと魅力的なプランを思いつく。
それを実行するため、音を立てぬよう間近までこっそり移動しようとしたが、獣の耳がぴくりと動いたので多分気づかれた。一応断りを入れておく。
「ちょっと失礼します」
彼の尻を枕にし、寝転がってみる。思惑通り、尻尾が良い位置に来た。首に巻くと、ふわふわふかふかあったか、極上の気持ちよさだ。
怒られたらやめようと思っていたが、彼は特にそれを止めるでもなく、されるがままになっている。どこまでなら許されるだろう。齧りつくのは……、さすがにやめるとして、思いきり頬ずりする分には何も言われなかった。
「尻尾襟巻き最高……」
「それはどうも」
「毟ったりしないから安心してね。お尻に生えててこその尻尾なんだから。ああ……、このあったかさ、眠くなってくる……。枕は硬すぎだけども」
「寝心地悪くてすんませんね。柔らかそうな女の子に化けようか?」
「そんなことも出来るの?」
「当たり前。狐の嗜み、基本スキルです。性別、人種、年代関係なく誰にでも」
「へえ、すごい。……うーん、でもいいや。他人に化けてまで、というのは違う気がする。俺は稔実さんのお尻枕の趣を堪能する」
「はいはい、どうぞどうぞ」
尻尾が動いて、顔や首回りをくすぐられた。
「ひゃー」
「今日は泊まらずに家に帰る?」
「んー、泊まろうと思えば泊まれるよ。母親にもさ、稔実さんが行方知れずになったこと相談してたの。で、昨日の朝家に寄ったときに、稔実さんが帰ってきたって報告をして、ついでに久長さん作の無断欠席の理由も簡単に話しといた。そしたら、一人で不安だろうから側にいてあげた方がいいんじゃないかって言ってくれて」
「利都のお母さん優しい……! でも、騙してるのは罪悪感が。はっしーや千ちゃんに対してもそうだけど」
羽島と千田の前では、べらべらと淀みなく嘘をついていたから、仕方ないこととすっぱり割り切っているものだと思っていたが、罪悪感はあったのか。嘘が平気というわけじゃなくて安心した。
「本当のこと、言えないんでしょ」
「まあ、ね。利都は俺が伴侶にって望んでいる人だから、特別に話す許可が出てるだけで。……あ、そうだ」
「なに?」
「今日か明日のどっちかに、利都の家へ挨拶に行くのはどうかな。俺たちが付き合ってること知ってるんだよね?」
「知ってる。話してあるよ。まあ、来るのはいいけど、そんなに気を遣うことないよ?」
「ほら、いずれは結婚するわけだしさ。やっぱりきっちりした印象を持ってもらうことは大事だよね。行方知れずになった真相はまだ明かせなくても、心配かけた謝罪くらいはしておかないと」
「結婚するって言うの?」
「言っていいなら言いたいけど、びっくりされるよねえ」
「まあ、稔実さんも表向き十代の高校生だしね。ずっと一緒にいたいと思ってる、くらいにしとくのは?」
「利都が言ってくれてたやつだね。じゃあそうしよっか」
「よし、今日と明日どっちが都合いいか聞いてみる」
手を伸ばして自分のスマホを取り、メッセージを打つ。『稔実さん、挨拶に来たいって。土日どっちがいい?』
「送信っと……。わあ」
枕がもぞもぞ動き出し、あったか襟巻きが離れていこうとしたため、掴んで引き止める。
「俺の襟巻き取らないでよ」
「まだいる?」
「いる!」
白い尾に顔をうずめて息を吸い込む。彼の髪と同じ香りがした。尻尾にまでシャンプーしているのかな。
また尻枕が動く。
「利都、着ていく服を選びに行きたいからさ。そろそろどいてほしい……」
「もうちょっとだけ! ……あ、返信来た。美春さんはいつも即レスなんだよなー。ああ、明日の日曜日の方がいいって。今日は政美さんが仕事に出ちゃったらしい」
「了解、明日ね。うーん、ジャケットはあった方がいいよな。ね、利都、こら」
「襟巻きー」
「また今度ね」
利都の下からするりと抜け出てしまう。首筋が一気に真冬になった。
「寒いよう」
「じゃあこうしよう」
畳の上で丸まった利都を立たせ、肩を抱いて引き寄せる。こめかみに口づけ。
「くっついてればあったかい」
「……うん」
「服一緒に選んで」
「いいよ」
そのまま引っつきあって二階へ。明日のための準備を始めた。
※作中に登場するのは、ファンタジー稲荷神社とファンタジー眷属です。実在の神社とは一切関係ありません。